
皮膚科 Dermatology
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アトピー性皮膚炎
概要
かゆみを伴い、慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)です。左右対称に起こり、乳児期では頭や顔に始まり、体幹や四肢に広がります。幼小児期では首や肘、膝に、思春期では顔や首、上半身に多く皮疹がでます。症状が軽いと乾燥肌と思われる程度ですが、ひどくなると赤い斑点が出たり、ジュクジュクしたり、皮膚が厚くなることもあります。増悪因子として、乳幼児期には食物アレルギー、それ以降ではダニやハウスダストなどの環境因子があげられます。その他、汗や空気の乾燥、皮膚に触れるさまざまな刺激、ストレスなども症状を悪化させる要因となります。
検査・治療方法これまでの経過や皮膚の症状を確認し、必要に応じて血液検査を行い、アトピー性皮膚炎で上昇する検査項目やアレルギーの有無を調べます。
基本的な治療は、保湿とステロイド外用薬や免疫抑制剤による外用療法です。かゆみが強いときには、抗ヒスタミン薬の内服を併用することもあります。それでも症状が改善しないときは、免疫抑制薬や分子標的薬による全身治療を行います。 -
蕁麻疹
(じんましん)
概要
強いかゆみがある赤みや白っぽいふくらみ(膨疹)がでる病気です。1つ1つの皮疹は、数十分から数時間以内にあとを残さずに消えることがほとんどですが、なかには半日から1日続くこともあります。皮疹が繰り返し出ることでずっと出ているように見えることもあります。原因が特定できないことも多いですが、食べ物や薬、感染症、寒冷、物理的刺激などが原因となることもあります。
検査・治療方法必要に応じてアレルギー検査を行いますが、皮疹が色を残して消えたり、発熱や体のだるさなどがあったりする場合は、他の疾患との鑑別を行います。
抗ヒスタミン薬の内服が治療の基本ですが、それでも症状が改善しない場合は、分子標的薬を使うこともあります。また、原因が特定できる場合は、原因物質を避けることが必要です。疲れやストレスは増悪因子となるため、できるだけためないようにしたり、青魚や刺激物、古くなった肉や魚、防腐剤や着色料を含む食品を避けることも推奨されます。 -
にきび
(ざ瘡)
概要
毛穴に繰り返し発生する慢性的な皮膚の病気で、10代から20代に多く見られますが、中高年に発症することもあります。炎症がない面ぽうという「白にきび」や「黒にきび」から始まり、炎症が起こると「赤にきび」や膿を伴う「黄にきび」になります。炎症が治ったあと、しばらく赤みを残したり、しこりやあとが残ることもあります。
顔や背中、胸部など、皮脂の分泌が活発な部位に多く発生します。ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ、一部の化粧品などが原因となり、症状を悪化させることがあります。検査・治療方法多くの人が経験し、成長過程のひとつと捉えられることもありますが、あとが残ることもありますので、症状が軽くても治療を受けることが重要です。また、酒さやカビによる毛包炎などの他の皮膚疾患との鑑別が必要になることもあります。
治療は、にきびの症状により外用薬を使用し、必要に応じて内服薬を併用します。「白にきび」をできづらくすることで再発を予防する外用薬もあります。また、自費診療による肌質改善治療を併用することも可能です。 -
帯状疱疹
(たいじょうほうしん)
概要
水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症です。過去に水ぼうそう(水痘)に感染したことがある人に発症します。左右どちらか一方に、赤い斑点や小さな水ぶくれが帯状に出ます。皮膚症状がでる1週間ほど前から、違和感やかゆみ、ピリピリした痛みを感じることがあります。痛みは皮膚の症状が改善しても続くことがあり、これを「帯状疱疹後神経痛」と言います。帯状疱疹の治療では、いかに「帯状疱疹後神経痛」を生じさせないか、軽減させるかが重要で、そのためには、皮疹が出てから早期の治療が有効と言われています。帯状疱疹予防接種は自費診療となりますが、予防接種は帯状疱疹の発症予防に加え、発症したときにも症状の軽減に有効です。
検査・治療方法治療の基本は抗ウイルス薬の内服です。皮膚の症状がでてから早く治療を開始するほど、治療効果が高まります。また、痛みの程度に応じて、鎮痛薬や神経痛に対する薬を併用することもあります。痛みが強い時は、ペインクリニックなどで専門的な治療を受けることが必要になることもあります。重症例や、免疫抑制治療を受けている方は、入院治療が必要となる場合もあります。
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単純ヘルペス
概要
単純ヘルペスウイルスによる感染症です。主に顔にできるものと、主に陰部にできるもの2種類がありますが、両方が混在していることもあります。はじめに患部がかゆくなったり、ピリピリした痛みが起こり、その後、赤くなったり小さな水ぶくれができます。ストレスや疲労による免疫低下がきっかけで再発することがあります。感染経路は、ヘルペスをもっている人との接触感染や飛沫感染によるものが一般的です。
検査・治療方法これまでの経過や患部の見た目から診断することが一般的です。
治療の基本は抗ウイルス薬の内服です。症状が出てから早期に治療を開始するほど、治りやすくなります。症状が軽い時は、抗ウイルス薬の外用で治療することもあります。再発を繰り返す場合は、皮疹が出る前の予兆(かゆみやチクチク感)が出た時に予防的に内服するPIT療法や、陰部ヘルペス再発を予防するために、抗ウイルス薬を長期間内服することもあります。発症時は患部を清潔に保ち、他の人にうつさないよう気を付けることが大切です。 -
水虫・白癬菌感染症
(はくせんきんかんせんしょう)
概要
白癬菌(皮膚糸状菌)というカビ(真菌)の一種による皮膚の感染症です。足に多く見られますが、他の部位の皮膚にも発生することがあります。症状として、皮むけができたり、硬くなったり、白くふやけたり、水ぶくれができたりします。かゆみを伴うことが多いですが、かゆみのない場合もあります。白癬菌は湿気の多い環境を好むため、皮膚を清潔に保ち、乾燥させることが大事です。また、他の人にうつさないためにタオルやバスマット、スリッパなどを共有しないことが大切です。
検査・治療方法症状がある皮膚を一部取り、顕微鏡で白癬菌の有無を検査します。検査は短時間で済みます。水虫に似た他の皮膚疾患の可能性もあるため、自己判断せず、医療機関を受診することをお勧めします。
治療は抗真菌薬の外用が一般的です。外用で治らなかったり、爪白癬(爪水虫)があったりするときは、抗真菌薬を内服することもあります。治療を途中で中断すると白癬菌が残っていることがありますので、治療終了の判断については医師と相談することが重要です。 -
たこ・魚の目
(胼胝・鶏眼)
概要
足の皮膚が部分的に厚く、硬くなった状態です。たこ(胼胝)は皮膚の外側に向かって硬くなり、魚の目(鶏眼)は皮膚の内側に向かって硬くなるため、魚の目(鶏眼)の方が痛みを伴うことがあります。どちらも足の特定の部位に圧迫や摩擦などの力が繰り返し加わることで生じると考えられています。
検査・治療方法治療として厚くなった部位の角質を削ります。削ることで痛みが軽減することが多いですが、しばらくするとまた皮膚が厚く硬くなってしまうことがあります。足に合った靴や中敷きを使用し、特定の部位にかかる力を減らすことも再発予防に有効と言われています。ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)との鑑別が必要になることもあります。
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ウイルス性イボ
(尋常性疣贅)
概要
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)は、ヒト乳頭腫ウイルスによる皮膚の感染症です。手や足にできることが多いですが、体の他の部位にできることがあります。また、手や足にできたものは、たこ(胼胝)や魚の目(鶏眼)との鑑別が必要になることがあります。
検査・治療方法必要に応じて拡大鏡(ダーモスコピー)を用いて診察します。診断が難しかったり、悪性の可能性があったりする場合は、皮膚生検(皮膚の一部を取り、顕微鏡で細胞を調べる検査)を行うこともあります。
-196℃の液体窒素を患部にあてる凍結療法が基本になります。この治療は定期的に繰り返し行う必要があります。必要に応じて、外用薬や内服薬を併用します。 -
爪
(巻き爪・陥入爪)
概要
爪の端が内側に向かって強く巻き込んだ状態を「巻き爪」といいます。足の親指に多く見られ、爪が皮膚にあたって痛みがあることもありますが、痛みがないこともあります。巻き爪とよく似た病気に「陥入爪」という、爪が周囲の皮膚にあたって炎症を起こした状態があります。「陥入爪」は爪の巻きの有無にかかわらず起こりますので、爪が痛いからと言って必ずしも巻き爪というわけではありません。巻き爪や陥入爪の原因として、不適切な爪の切り方(深爪や角を切りすぎること)、サイズの合わない靴の着用、爪や足への外傷などがあげられます。
検査・治療方法炎症がある場合には、炎症の治療を優先して行います。
巻き爪の度合いや痛みの程度により、爪周囲の皮膚をテープで引っ張る「テープ法」や、爪と皮膚の間に線維を入れる「コットンパッキング法」や、細いチューブを入れる「ガター法」といった保存的治療を行います。また、必要に応じてワイヤーなどを用いた爪の矯正を行うこともありますが、爪の矯正は保険適用外の診療となります。 -
かぶれ
(接触皮膚炎)
概要
かぶれ(接触皮膚炎)とは、外からの刺激により湿疹が生じた状態です。湿疹とは、赤い斑点やぶつぶつ、時に水ぶくれがでる状態で、慢性化すると皮膚が厚くなり、ごわごわとした質感になることがあります。
接触皮膚炎は、「刺激性接触皮膚炎」と「アレルギー性接触皮膚炎」に分類されます。「刺激性接触皮膚炎」は化学物質や物理的刺激による直接的な皮膚の損傷が原因で、「アレルギー性接触皮膚炎」はアレルギーがある方のみに症状が出ます。原因は化粧品・洗剤・石鹸・シャンプー・毛染め・金属・植物・衣類など多岐にわたります。検査・治療方法治療で最も重要なのは、原因をみつけ、それを除去することです。そのためには、いつ、どこに、どんな時に症状がでるかなどの病歴が手がかりになります。「アレルギー性接触皮膚炎」の場合は、原因物質を特定するためにパッチテストを行うこともあります。
治療としては、原因物質の除去に加え、ステロイド外用薬を使用したり、必要に応じて抗ヒスタミン薬などの内服薬を併用することもあります。 -
とびひ
(伝染性膿痂疹)
概要
細菌による皮膚の感染症で、接触により感染が広がります。あせもや虫刺され、湿疹をかいたり、擦り傷のような傷に感染が起きてとびひになります。とびひには主に2種類があり、水ぶくれができ皮膚がむけてびらんを作ることが多い「水疱性膿痂疹」と、炎症が強くてかさぶたが厚くつく「痂皮性膿痂疹」があります。
検査・治療方法見た目の特徴から診断を行いますが、必要に応じて細菌培養検査を行い、原因菌を特定することもあります。
治療の基本は抗菌薬の外用や内服です。 かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬の内服を追加することもあります。また、患部を清潔に保ち、感染を広げないようにするために患部をガーゼなどで保護したりして、露出を避けることが重要です。 -
やけど
(熱傷)
概要
やけど(熱傷)とは、熱による皮膚や粘膜の外傷のことを言います。高温によるものはもちろん、時には40~55℃程度の比較的低い温度でもやけどを引き起こすことがあります。やけどは受傷直後から赤みや腫れが出ますが、やけどの程度によっては、その後に水ぶくれ(水疱)ができることもあります。ひどいやけどでは、皮膚が壊死し、痛みを感じなくなることもあります。受傷直後には、やけどの深さを正確に判断できないことも少なくありません。
検査・治療方法やけどを負った際は、すぐに患部を冷やすことが重要です。流水で15~30分間冷やしますが、服の上からやけどした場合は、無理に脱がずに服の上から冷やしてください。水ぶくれ(水疱)ができたり、広い範囲にやけどをした場合は、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。
治療は、やけどの深さ、広さ、感染の有無に合わせて行います。やけどに感染が伴うと症状が悪化することがあるため、注意が必要です。
治療は軟膏の外用による保存的治療が基本ですが、やけどが深い時には植皮術などの外科的治療が可能な医療機関へご紹介することもあります。 -
円形脱毛症
概要
突然、境界がはっきりした円形の脱毛が生じる病気です。主に頭部に起きますが、眉毛、ひげ、体毛に起きることもあります。頭全体や全身の毛が抜けてしまうこともあります。通常、かゆみや痛みなどの自覚症状は伴いません。予後には個人差があり、自然に治癒する場合もあれば、治療が必要となる場合もあります。
検査・治療方法脱毛部の状態を診察し、必要に応じて、脱毛を引き起こす可能性のある他の病気(膠原病や甲状腺機能異常など)の有無を血液検査で調べたり、真菌感染の有無を調べることもあります。
治療は症状に応じて、ステロイドの外用、液体窒素療法、内服治療を行います。 -
粉瘤
(ふんりゅう)
概要
皮膚の下にできる良性のできものです。粉瘤は体のどこにでも発生する可能性があり、大きさは米粒程度の小さなものから数センチに及ぶものまでさまざまです。主な症状は、皮膚の下にしこりを感じることです。炎症が起こると大きくなり、赤く腫れ、痛みを伴うようになります。
検査・治療方法しこりの大きさや形、表面の皮膚の状態などを確認します。炎症が伴っている時は、抗菌薬の内服や外用を行い、必要に応じて部分的に切開し、内部の膿や内容物を排出する処置を行います。粉瘤(ふんりゅう)は良性のできもののため、必ずしも取る必要はありませんが、希望される場合は外科的に摘出することも検討します。
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多汗症
概要
日常生活に支障がでるほど、たくさんの汗が出てしまう状態を多汗症と言います。多汗症には、全身に汗が増える「全身性多汗症」と、手のひら、足の裏、ワキといった限定された部位に多量の汗がでる「局所多汗症」があります。特定の原因がないことが多いですが、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの基礎疾患、薬剤、末梢神経障害などが原因でおこることもあります。
検査・治療方法これまでの経過を確認しながら、発汗の程度や部位、日常生活への影響を確認します。また、基礎疾患検索目的に、血液検査を行うこともあります。
治療は、抗コリン作用(汗の量を減らす効果)がある外用薬を使用します。それでも症状が改善しないときは、内服治療を行う場合もあります。基礎疾患がある場合は、その治療を優先します。 -
尋常性乾癬
(じんじょうせいかんせん)
概要
青壮年期に発症することが多い皮膚の病気です。皮膚が赤く盛り上がり、その表面が銀白色のうろこのような粉で覆われます。感染症ではないため、人にうつることはありません。発疹は全身どこにでも出ますが、外からの刺激を受けやすい肘・膝・腰まわり・すね・頭・髪の毛の生え際に出やすい傾向があります。また、爪に症状が出ると、爪の色が濁ったり、表面が凸凹になったりすることがあります。かゆみを伴うこともあります。原因は完全にはわかっていませんが、遺伝的素因・不規則な生活習慣・食事・ストレス・肥満・特定の薬剤などが関わっていると考えられています。
検査・治療方法皮膚の症状を観察し、診断を行います。
治療の基本は、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD₃による外用療法です。必要に応じて、レチノイドやアプレミラストなどの内服療法を行います。